「口育(こういく)」という言葉を聞いたことはありますか?これは、子どもの“お口の機能”を育てる取り組みのこと。噛む・飲み込む・話す・呼吸する——どれも生きるうえで欠かせない力です。
最近は「お口ポカン(口唇閉鎖不全)」の子が増えていて、ある保育園では3〜4割もいたというデータも。口の機能がうまく育たないと、歯並びや口呼吸、虫歯などにつながることがあります。
この記事では、薬剤師ママの視点で、家庭でできる口育の具体的な方法をまとめました。離乳食の食べさせ方から、コップ飲み、吹く遊びまで、毎日の中で無理なく取り入れられることばかりです。
💡 この記事でわかること
- 口育(口腔機能の発達)とは何か
- 離乳食のスプーン・食べさせ方のコツ
- ストローよりコップ飲みを先にする理由
- 「吹く遊び」が口の機能を育てる理由
- お口ポカン・寝ているときの口呼吸チェック
口育(こういく)ってなに?
口育とは、食べる・飲み込む・話す・呼吸するといった「お口の機能」を、成長に合わせて正しく育てる取り組みです。歯科では、これらの機能がうまく発達していない状態を「口腔機能発達不全症」と呼び、近年注目されています。
口の機能が育つと、口をしっかり閉じる力(口唇閉鎖力)がつき、鼻呼吸・よい歯並び・きれいな発音につながりやすくなります。逆に育たないと、お口ポカンや口呼吸、歯並びの乱れの原因になることも。家庭での毎日の習慣が、口の発達を大きく左右するのです。
※歯並びそのものの原因や指しゃぶりについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
①離乳食のスプーン・食べさせ方
口育は離乳食からすでに始まっています。ポイントは、「赤ちゃん自身の上唇で食べ物を取り込ませる」こと。
- スプーンはボウル部分が浅くて平らなものを選ぶ
- 食べ物をのせたスプーンを下唇にちょこんとのせ、口が開くのを待つ
- 上唇が下りてきて、自分で取り込むのを待ってから、スプーンを水平に引き抜く
- 赤ちゃんの口の奥に押し込まない
スプーンを奥に押し込んで食べさせると、上唇を使う練習ができず、舌が低い位置になったり、口唇閉鎖不全につながることがあります。平らなスプーンで「上唇でとらえる」感覚を育てるのが、口育の第一歩です。
②食べるときの姿勢と「よく噛む」
- 足の裏が床(または足台)にしっかりつく高さの椅子で食べる
- 背筋をのばし、口を閉じてよく噛む習慣をつける
- やわらかいものばかりでなく、月齢に合った歯ごたえのある食材も取り入れる
- 親が口を閉じて噛むお手本を見せる
足がブラブラした姿勢だと噛む力が入りません。足が床につくだけで、噛む力・飲み込みが安定します。よく噛むことは、あごの発達にもつながります。
③ストローより「コップ飲み」を先に
意外と知られていないのが、飲み物の練習はコップ飲みを先に、という考え方です。
ストロー飲みは、唇よりも舌の力を使う飲み方です。先にストローを覚えると、舌で歯を外側に押すクセがつき、歯が広がりやすくなる…という見解があります。一方コップ飲みは、上下の唇をしっかり使って飲むので、口唇閉鎖力を育てるのにぴったり。
もちろんストローが絶対ダメというわけではありませんが、まずはコップ飲みから練習すると、口の機能を育てる観点ではおすすめです。
④「吹く遊び」で口唇閉鎖力を育てる
口育のなかでも、子どもが楽しみながらできるのが「吹く遊び」。息を吹く動作は、口をすぼめて閉じる力(口唇閉鎖力)や、頬・口まわりの筋肉を自然に鍛えてくれます。
- 吹き戻し(ピロピロ笛)
- ラッパ・笛などの楽器のおもちゃ
- 風船・紙風船をふくらませる
- シャボン玉
- ストローで紙を吹いて動かす、吹き絵
「トレーニング」と気負わず、遊びの延長で取り入れるのがコツ。お風呂でシャボン玉、おやつのあとに吹き戻し…など、生活に溶け込ませると続けやすいです。
吹く遊びのおもちゃは、いろいろ用意しておくと飽きずに続けられます。定番の吹き戻し(ピロピロ)は数が多くてコスパ◎。少し成長したら本物そっくりのトランペットなど楽器のおもちゃもおすすめです。
⑤お口のマッサージ・口まわりの刺激
口まわりの筋肉をやさしく刺激するお口のマッサージも、スキンシップを兼ねて取り入れられます。ほっぺや唇のまわりを清潔な指でやさしくなでたり、軽く押したりして、口の感覚や動きを引き出してあげましょう。
嫌がるときは無理せず、あくまで機嫌のよいときに、遊びの延長で。くすぐり遊びや、表情をまねっこする遊びも、口まわりの筋肉を使う良い刺激になります。
⑥お口ポカン・寝ているときの口呼吸チェック
なお、鼻がつまっていると、赤ちゃんは口で呼吸するしかありません。鼻水はこまめに吸ってあげることが、鼻呼吸を守る第一歩です。また、舌の動きや滑舌が気になる場合は舌小帯の記事もあわせてどうぞ。
口育で見逃したくないのが「お口ポカン」。日中だけでなく、寝ているときに口が開いていないかもチェックしてみましょう。
- 起きているとき、いつも口が開いている
- 寝ているときに口が開き、いびきをかく
- 食べるときにくちゃくちゃ音がする・よくこぼす
こうしたサインがあるときは、口呼吸が習慣になっているかもしれません。背景に鼻づまり(アレルギー性鼻炎やアデノイドなど)が隠れていることもあるので、気になるときは耳鼻科や小児歯科に相談を。
歯科で行う口育|Vキッズなどの選択肢
家庭でのケアに加えて、歯科で口の機能の発達をサポートする方法もあります。その一つが「Vキッズ」という小児口腔機能育成装置。3歳ごろから使える取り外し式のマウスピースで、主に就寝中に装着し、お口の成長や呼吸・噛む力をサポートする目的で使われます。
ただし、こうした装置が必要かどうかはお子さんの状態によって異なり、専門的な判断が必要です。効果の感じ方にも個人差があります。興味がある場合は、口育に取り組んでいる小児歯科で相談してみてください。まずは家庭でできることから始めるのが基本です。
もっと口育を知りたい方へ
「口育についてもっと体系的に知りたい」という方には、日本口育協会による書籍もおすすめ。口腔機能発達不全症や、口から見る全身の発育について、専門家の視点でわかりやすくまとめられています。電子書籍ですぐ読めます。
まとめ|口育は「毎日の遊びと食事」でできる
- 離乳食は平らなスプーンで、上唇で取り込ませる(押し込まない)
- 足が床につく姿勢で、口を閉じてよく噛む
- 飲み物はコップ飲みを先に練習
- 吹く遊び(吹き戻し・風船・シャボン玉)で楽しく口唇を鍛える
- お口ポカン・寝ているときの口呼吸をチェック、気になれば受診
口育は、特別な道具がなくても、毎日の食事と遊びの中で十分取り入れられます。「上唇を使う」「口を閉じる」「よく噛む」を意識するだけでも立派な口育です。肩の力を抜いて、できることから始めてみてくださいね。
※口育(口腔機能の発達支援)は近年広がってきた分野で、家庭での取り組みの効果には個人差があります。本記事は一般的な情報をまとめたものです。お口ポカン・口呼吸・歯並び・発音などが気になる場合は、小児歯科・矯正歯科・耳鼻咽喉科など専門機関にご相談ください。
参考文献・出典
- 8020推進財団/口腔機能発達不全症に関する情報
- 小児歯科の口腔機能育成(口育)に関する解説
※本記事は上記の公的機関・学会・研究等を参考に、薬剤師がわかりやすくまとめたものです。


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