乳腺炎の対処法|葛根湯・ロキソニン・抗生剤・冷やす温めるを薬剤師ママが解説

乳腺炎の対処法(飲ませる・冷やす・葛根湯・ロキソニン・抗生剤・受診目安)を薬剤師ママが解説|授乳するママと保冷剤やお薬のイラスト くすり・薬の知識

「おっぱいが痛い、しこりがある、熱まで出てきた…」——授乳中の乳腺炎は、本当につらいですよね。高熱でぐったりしながら授乳するのは、心が折れそうになります。

乳腺炎は、対処の順番を間違えると悪化することも。逆に、正しく対応すれば早く回復に向かいます。この記事では、薬剤師ママの視点で、まずやるべきこと・葛根湯やロキソニンの使い方・冷やす/温める・抗生剤・受診の目安まで、ガイドラインにもとづいて解説します。

💡 この記事でわかること

  • 乳腺炎になったら、まず何をすべきか
  • 冷やす?温める?正しいのはどっち
  • 葛根湯はどんなときに飲む?
  • ロキソニン・アセトアミノフェンは飲める?
  • 抗生剤が出たら/受診の目安
  • 「抗生剤で乳腺炎が長引く」は本当?(ABMガイドライン)

まず最優先|赤ちゃんにたくさん飲ませる

乳腺炎ケアでいちばん大事なのは、母乳のうっ滞(溜まり)を解消すること。だから、まずは赤ちゃんに、詰まっている側からもたくさん飲ませましょう。「痛いから・熱があるから」と授乳を急にやめると、母乳が溜まってかえって悪化します。

  • 赤ちゃんが欲しがる分だけ、しっかり飲ませる
  • 飲ませる姿勢や角度を変えると、詰まりが取れやすいことも(助産師さんに相談を)
  • 張りすぎて痛いときは、電動搾乳機などで「圧抜き」程度に少しだけ搾るのはOK

ただし注意。「空っぽになるまで搾り切る」のは逆効果。母乳は「出した分だけ作られる」ので、搾り切るとさらに作りすぎて悪循環に。搾乳の目的は「空にすること」ではなく「痛みを和らげること」と覚えておきましょう。

▼ 張って痛いときの「圧抜き」に、電動搾乳器があると片手で手軽。手が疲れず、痛い胸をやさしく少しだけ搾れます(※搾り切らず、痛みが和らぐ程度に)。

▼ 乳腺炎の時期は頻回授乳・夜間授乳が増えるもの。授乳口付きのパジャマなら、前をはだけずサッと授乳できて、体(胸まわり)を冷やさないのも助かります。ウエスト調節付きで産後の体型変化にも対応。

冷やす?温める?→ 炎症があるときは「冷やす」

これは迷いやすいポイント。赤み・痛み・熱感などの炎症があるときは、「冷やす」のが基本です。

炎症が起きているときに温めると、血流が良くなりすぎて、かえって腫れや痛みが悪化することがわかっています。保冷剤をタオルで包んで、痛い部分を冷やすと楽になります(冷やしすぎ・直接当てには注意)。「乳腺炎は温める」は昔の常識で、今は“冷やす”が新常識です。

貼るだけで手軽に冷やせる冷却シートは、動きながらでも使えて便利。しっかり冷やしたいときは保冷剤(タオルで包む)が確実ですが、「ちょっと冷やしてラクにしたい」ときや持ち歩きにはこちらが手軽です。

葛根湯はどんなときに飲む?

葛根湯(かっこんとう)は、乳腺炎の“初期”に使えます。「痛みは強くないけれど、しこり・張り・熱っぽさがある」ような、なりかけ〜初期の段階に向いています。授乳中でも飲める漢方です。

ただし、葛根湯だけでは痛みや熱が取れないこともあります。「痛みが強い」「高い熱が出ている」ような場合は、葛根湯で様子を見るより、早めに受診して鎮痛剤や抗生剤を相談するほうが安心です。

▼ 「なりかけかも」というときのために、葛根湯を常備しておくと安心。授乳中でも飲めますが、痛み・高熱が強いときは我慢せず受診を。顆粒タイプは水なしでも飲みやすいです。

ロキソニン・アセトアミノフェンは飲んでいい?

痛みがつらいとき、消炎鎮痛剤も授乳中に使えます。痛みを抑えるだけでなく、炎症を落ち着かせる目的でも使われます。

  • アセトアミノフェン(カロナール):授乳中に安全性が高く、よく使われます
  • ロキソニン(ロキソプロフェン)・イブプロフェン:こちらも授乳中に使用可能とされ、乳腺炎の痛み・炎症に用いられます

どちらも授乳を続けながら使えますが、自己判断で市販薬を続けるより、受診時に医師・薬剤師に相談して処方してもらうのが安心です。授乳中のお薬全般についてはこちらの記事もどうぞ。

抗生剤が処方されたら|飲み切る・授乳は続ける

母乳の溜まりだけでなく細菌感染を起こした乳腺炎(化膿性乳腺炎)では、抗生剤(セフェム系など)が処方されます。これらは授乳しながら飲めるものが選ばれるので安心してください。

  • 処方された抗生剤は、指示どおり最後まで飲み切る(途中でやめると再発・悪化のもと)
  • 抗生剤を飲んでいる間も、授乳は続けてOK(むしろ続けることが治療の一部)

「抗生剤を飲むと乳腺炎が長引く」ってほんと?

助産師さんから「抗生剤を飲むと、かえって乳腺炎が長引く(繰り返す)」と言われた方もいるかもしれません。これは「抗生剤を飲めば必ず長引く」という直接のエビデンスがあるわけではないのですが、言葉の背景には、最新の考え方に沿った妥当な部分があります。

近年の授乳医学のガイドライン(米国母乳育児医学会 ABM 2022)では、乳腺炎は「炎症の連続体(スペクトラム)」としてとらえ直されています。ポイントはこちらです。

  • 乳腺炎の多くは、細菌感染ではなく“炎症性”。母乳のうっ滞や作りすぎによる炎症で、抗生剤なしで自然に回復することが多い
  • 必要ないのに抗生剤を使うと、乳房の常在菌のバランスが乱れ(ディスバイオシス)、それが「再発性乳腺炎」のリスクになりうる
  • だから抗生剤は、細菌感染がはっきりした乳腺炎(化膿性)に絞って使うのが今の主流。抗生剤の使いすぎ(過剰治療)は避けるべき、とされています

まとめると——「必要ないのに抗生剤を飲むと、常在菌を乱して再発・長引く要因になりうる」という点では、助産師さんの言葉は今の考え方に合っています。ただし「抗生剤=必ず長引く・悪」ではありません。細菌感染が明らかなときは抗生剤が必要で、その場合は指示どおり飲み切ることが大切です。カギは「炎症性か細菌性かの見極め」。まずは飲ませる・冷やすなどの基本ケアをしつつ、抗生剤が要るかどうかは症状を見て医師と相談して決めましょう(自己判断で中断しないこと)。

こんなときは受診を|目安

🚨 早めに受診したいサイン

  • 37.5度以上の発熱+乳房の赤み・腫れ・痛み
  • 授乳・冷却・葛根湯で改善しない/悪化する
  • 強い痛み・しこりが大きくなる、膿が出る
  • 悪寒・関節痛など、インフルエンザのような全身症状

とくに発熱を伴う場合は、その日〜翌日には産婦人科・乳腺科・母乳外来などを受診しましょう。助産師さんの母乳マッサージや授乳指導も、回復の大きな助けになります。我慢して重症化させないことが大切です。

まとめ|「飲ませる・冷やす・早めの受診」

  • まず赤ちゃんにたくさん飲ませる(やめない/搾り切らない)
  • 炎症があるときは冷やす(温めない)
  • 葛根湯は初期に。痛み・熱が強ければ受診を
  • ロキソニン・カロナールは授乳中も使える(医師・薬剤師に相談)
  • 抗生剤は飲み切る・授乳は続ける
  • 37.5度以上+乳房症状なら早めに受診

乳腺炎は、早めに正しく対処すれば回復に向かいます。一人でつらい思いをせず、助産師さんや医療機関を頼ってくださいね。お大事に。

▼ つらい時期こそ、ほっと一息も大切に。授乳中はカフェインを控えたい方も多いので、ノンカフェインのたんぽぽコーヒーは気兼ねなく飲めるのがうれしいところ。(※「母乳が増える・乳腺炎に効く」といった効果を示すものではありませんが、カフェインを気にせずリラックスしたいときに)

▼ 授乳中の水分補給に、ノンカフェインの母乳ケアハーブティー(AMOMA)を選ぶママも多いです。(※ハーブティーで「母乳が増える・乳腺炎が治る」といった効果は科学的に確立したものではありません。ただ、こまめな水分補給は授乳期に大切なので、カフェインを気にせず飲める一杯として。)

※本記事は「乳腺炎ケアガイドライン」等にもとづく一般的な情報です。症状には個人差があり、発熱を伴う乳腺炎は受診が必要です。お薬の使用は自己判断せず、医師・薬剤師・助産師にご相談ください。

参考文献・出典

  • 日本助産師会「乳腺炎ケアガイドライン2020」(PDF)
  • NPO法人 日本ラクテーション・コンサルタント協会 母乳育児情報(乳腺炎)
  • MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳腺炎」
  • 国立成育医療研究センター「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」

※本記事は上記の公的機関・学会・研究等を参考に、薬剤師がわかりやすくまとめたものです。

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