薬剤師ママの私(さな)です。「きょうだいはいたほうがいい?」「一人っ子だと、かわいそう?」——妊娠・出産・育児のどこかで、一度は考えるテーマだと思います。
この記事では、国内外の研究(論文・公的調査)をもとに、きょうだいの有無が性格・学力・健康にどう関係するかを整理しました。
この記事を読むとわかること
- きょうだいがいる/いないで、性格や能力は変わるのか(結論)
- きょうだいがいるメリット・デメリット(研究ベース)
- 学力・学歴への影響:日本のデータと海外の大規模研究
- 一人っ子の「わがまま」「協調性がない」は本当か
- 日本の「きょうだい数」の現状と、家庭でできること
結論:きょうだいの有無より「親の余裕と関わりの質」が大きい
先に結論です。研究を見渡すと、次のようにまとめられます。
- 性格:きょうだいの数や生まれ順による性格差は、大規模研究ではほぼ見られない(Rohrer et al., 2015)
- 一人っ子のイメージ:「わがまま」「社会性が低い」を裏づける結果は、欧米のメタ分析では見つかっていない(Falbo & Polit, 1986)
- 学力:きょうだいが多いほど平均的な学力・学歴はやや低くなる傾向。ただし差は小さく、背景には「親の時間・お金が分かれること」が考えられている
- メリット:きょうだいがいる子は、対人スキルや「相手の気持ちを理解する力」が育ちやすい傾向
- デメリット:親の資源の分散、きょうだい間のけんか・いじめ、費用の負担
つまり「どちらが正解」ではなく、どちらの家庭にも得意なことと気をつけたいことがある、というのが研究から言えることです。以下、順に見ていきます。
日本の「きょうだい数」の現状
国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査(2021年)」では、結婚持続期間15〜19年の夫婦の平均出生子ども数(完結出生児数)は1.90人でした。子どもの数は「2人」が最も多く約5割(約54%)、「1人」は約18.6%と、一人っ子家庭は約5〜6組に1組という計算になります。
一人っ子は決して少数派ではなく、「うちだけ特別」ということはありません。
性格への影響:生まれ順・きょうだい数でほぼ変わらない
「長子はしっかり者」「末っ子は甘えん坊」といった話はよく聞きますが、科学的にはどうでしょうか。
ドイツ・米国・英国の2万人以上のデータを分析した研究(Rohrer, Egloff & Schmukle, PNAS 2015)では、外向性・情緒安定性・協調性・誠実性・開放性といった性格特性に、生まれ順による差はほぼありませんでした。差が見られたのは「知的な面」で、第一子のIQがわずかに高い(約1.5ポイント程度)という小さな結果にとどまっています。
「長子らしさ」「末っ子らしさ」は、親や周囲の期待・思い込みから生まれる部分も大きいと考えられます。
一人っ子は本当に「わがまま」?
欧米の研究:不利な点は見つからなかった
一人っ子研究の代表が、Falbo & Polit(Psychological Bulletin, 1986)のメタ分析です。115件の研究を統合した結果、一人っ子は適応・性格・親子関係の面で、きょうだいのいる子と大きな差がなく、学業や知能の面ではむしろ第一子と同程度に高い傾向でした。
中国の「小皇帝」研究は文脈が特殊
一方、中国の一人っ子政策下で生まれた世代を調べた研究(Cameron et al., Science 2013)では、政策後生まれの人は、信頼度・リスクをとる意欲・競争心が低く、悲観的な傾向が示されました。ただしこれは、6人の大人(両親・祖父母)が1人の子に注目するという中国特有の環境や、政策そのものの影響を含んだ結果です。日本の一人っ子にそのまま当てはめることはできません。
一人っ子の「気をつけたい点」として言われること
- 同年代の子と関わる機会は、意識して作らないと少なくなりやすい
- 親の期待や関心が1人に集中しやすい
- 将来の親の介護などを1人で担う負担への不安(制度や周囲に頼る準備でカバー可能)
きょうだいがいるメリット
① 対人スキルが育ちやすい
米国の幼稚園児を調べた研究(Downey & Condron, Journal of Marriage and Family, 2004)では、きょうだいがいる子は、同年代との関わりで協調性・自己コントロールの評価が高い傾向でした。家庭内で「ゆずる・待つ・交渉する」を日常的に経験するためと考えられています。
② 相手の気持ちを理解する力(心の理論)
「相手は自分と違うことを考えている」と理解する力を心の理論と呼びます。きょうだい、とくに年上のきょうだいがいる子は、この力の獲得が早い傾向を示す研究があります(McAlister & Peterson, 2013 など)。ただし、友だちや保育園での関わりでも育つ力なので、きょうだいがいないと身につかないわけではありません。
③ アレルギーが少なくなる可能性(衛生仮説)
1989年にStrachanが「きょうだいが多いほど花粉症が少ない」と報告して以来、「幼少期に感染症など微生物にふれる機会が多いほどアレルギーになりにくい」という衛生仮説が議論されてきました。ただし、これはあくまで統計的な傾向で、「だからきょうだいをつくる」「わざと感染させる」といった判断の根拠にはなりません。下の子が入園して風邪をもらってくる……という現実もあります。
④ 助け合える相手がいる
大人になってからの精神的な支え、親の介護や相続の相談相手になれる点は、きょうだいならではの強みです。
きょうだいがいるデメリット
① 親の「時間・お金・注意」が分かれる(資源希釈モデル)
Downey(American Psychologist, 2001)は、子どもの数が増えると親が1人あたりにかけられる時間・お金・関心が薄まるという「資源希釈モデル」を提唱しました。きょうだい数と学力・学歴の関係を説明する代表的な考え方です。
② きょうだい間のけんか・いじめ
きょうだいげんかは多くの家庭で日常ですが、英国の研究グループ(Wolke ら)のレビューでは、継続的なきょうだい間のいじめが、のちの不安・抑うつなどのメンタルヘルスと関連することが報告されています。「仲良くするのが当たり前」とは考えず、力の差があるときは大人が介入することが大切です。
③ 費用の負担
文部科学省の「子供の学習費調査」を見ても、教育費は子どもの数に比例して増えます。保育料・習い事・進学費用まで考えると、家計への影響は小さくありません。
学力・学歴への影響はある?
日本のデータ:きょうだいが多いほど、国語から影響が出る
北海道大学の中村聖さんによる研究(現代社会学研究, 2025)は、小1〜中3の約1,970人(約1,200世帯)を対象に、同じ家族内のきょうだいを比べて分析しました。
- 算数・数学:一人っ子と2人きょうだいで差は認められず、3人以上で低下
- 国語:2人きょうだいの段階から低下、3人以上でさらに強まる
- 生まれ順:同じ家庭内での出生順位の影響は統計的に有意ではなかった
国語は読み聞かせなど親子のやりとりの影響を受けやすく、親の時間が分かれることが関係している可能性が指摘されています。「第二子だから学力が低い」のではなく、「きょうだい数が多い家庭の子だから」という点がポイントです。
学歴についても、国内の調査(平沢和司, 家族社会学研究)で、多くの年代で「きょうだいが多いほど学歴が低い傾向」が確認されています。
海外の大規模研究:差はあっても小さい
ノルウェーの全国データを使ったBlack, Devereux & Salvanes(Quarterly Journal of Economics, 2005)は、家族の背景をそろえて分析し、きょうだい数そのものの影響はほとんどなく、出生順位(後に生まれるほど教育年数がわずかに短い)の影響が主だったと報告しています。国や時代、分析方法で結論が変わるのが、この分野の難しいところです。
学力研究を読むときの注意
- 「平均の傾向」であり、個々の子どもに当てはまるとは限らない
- 差は小さく、親の学歴・所得・関わり方の影響のほうが大きい
- 「きょうだいが多い=不利」ではなく、「親の資源が分散しやすい」というだけ
きょうだいがいる家庭・いない家庭、それぞれできること
きょうだいがいる家庭
- 1人ずつ「ふたりだけの時間」を短くてもつくる(寝る前10分など)
- 比べる言葉(「お兄ちゃんはできたのに」)を避ける
- けんかは力の差があるときだけ大人が介入
- 読み聞かせは下の子の分も続ける(国語力への影響が指摘されているため)
一人っ子の家庭
- 保育園・幼稚園・習い事・地域の行事で、同年代との関わりを確保
- 親が過度に期待や不安を集中させない
- いとこ・友だち家族との交流で「ゆずる・待つ」の経験を増やす
薬剤師ママの私から
研究を読んで一番感じたのは、「きょうだいの数」より「親が疲れ切っていないこと」が子どもに効くということでした。きょうだいがいても一人っ子でも、親が余裕を持って関われる環境が整っていることが、結局いちばん大切です。
「一人っ子で申し訳ない」「きょうだいが多くて手が回らない」と自分を責める必要はありません。今の家族の形で、できる範囲の関わりを続けることが、研究的にも十分に意味のあることだと思います。
※この記事は一般的な情報提供です。研究は集団の平均的な傾向を示したもので、個々のお子さんの性格や能力を決めるものではありません。
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参考文献
- Rohrer JM, Egloff B, Schmukle SC. Examining the effects of birth order on personality. PNAS. 2015;112(46):14224-14229.
- Falbo T, Polit DF. Quantitative review of the only child literature. Psychological Bulletin. 1986;100(2):176-189.
- Cameron L, et al. Little emperors: behavioral impacts of China’s one-child policy. Science. 2013;339:953-957.
- Downey DB. Number of siblings and intellectual development: the resource dilution explanation. American Psychologist. 2001;56(6-7):497-504.
- Downey DB, Condron DJ. Playing well with others in kindergarten: the benefit of siblings at home. Journal of Marriage and Family. 2004;66(2):333-350.
- Black SE, Devereux PJ, Salvanes KG. The more the merrier? The effect of family size and birth order on children’s education. Quarterly Journal of Economics. 2005;120(2):669-700.
- Strachan DP. Hay fever, hygiene, and household size. BMJ. 1989;299:1259-1260.
- 中村聖. 学力に対するきょうだい構成の影響. 現代社会学研究. 2025;38:1-17.
- 平沢和司. きょうだい数と学歴に関する基礎的分析. 家族社会学研究.
- 国立社会保障・人口問題研究所. 第16回出生動向基本調査(2021年).
- 文部科学省. 子供の学習費調査.
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