📋 この記事を読むとわかること
- 熱性けいれんが起きたときの正しい対応(動画・体位・時間)
- 救急車を呼ぶ基準はどこから?
- 単純型と複雑型(片側・15分以上・繰り返し)の違い
- 注意すべき薬(抗ヒスタミン薬・テオフィリン)
- 何度以上で注意?遺伝・アレルギー・脳波との関係
- 何歳まで続く?繰り返す場合の予防(ダイアップ)
目の前で子どもが突然白目をむいて、体をガクガクさせる——熱性けいれんは、親にとって本当に怖い体験です。「死んでしまうのでは」とパニックになる方も少なくありません。
でも、熱性けいれんの多くは数分でおさまり、後遺症を残しません。大切なのは「正しく対応し、慌てないこと」。この記事では、薬剤師ママが「熱性けいれん診療ガイドライン2023」をもとに、いざという時の対応を具体的に解説します。
熱性けいれんとは?|10人に1人が経験
熱性けいれんは、生後6ヶ月〜5歳ごろの子どもが、発熱に伴って起こすけいれん(発作)です。子どもの約2〜5%(およそ10人に1人)が経験する、子どもで最も多いけいれんです。多くは38度以上の熱の上がり際に起こります。
熱性けいれんが起きたら?|やるべきこと・やってはいけないこと
✅ やるべきこと
- まず時間を見る(時計・スマホで開始時刻を確認)。「何分続いたか」が最重要
- 体を横向きに寝かせる(嘔吐物で窒息しないように)
- まわりの危険物をどける。平らで安全な場所に
- 衣服をゆるめる、静かに見守る
- けいれんの様子を動画で撮る(後述)
❌ やってはいけないこと
- 口に指やタオル・箸を入れない(舌をかむ心配は不要。かえって窒息・けがの危険)
- 体を強く押さえつけない・揺さぶらない
- 大声で名前を呼び続けない(刺激せず見守る)
- 発作中に水や薬を飲ませない(誤嚥の危険)
動画をとる?|できれば「撮ってOK」
余裕があれば、けいれんの様子をスマホで撮影してください。診断にとても役立ちます。医師は「左右対称か/片側だけか」「目や手足の動き」「どのくらい続いたか」を知りたいのですが、受診時にはけいれんが止まっていることがほとんど。動画があれば単純型か複雑型かの判断材料になります。
ただし撮影より安全確保が最優先。横向きにして時間を計ることを先に行い、それができたら撮影を、という順番でOKです。
救急車を呼ぶ?|5分がひとつの目安
単純な熱性けいれんは、通常3〜5分でおさまります。おさまって意識が戻れば、慌てて救急車を呼ばず、落ち着いてから小児科を受診でも構いません。ただし、次の場合はすぐに救急車(119番)を呼んでください。
🚨 すぐ救急車を呼ぶサイン
- けいれんが5分以上続く(薬で止める必要がある)
- 初めての熱性けいれん(念のため受診が安心)
- けいれんが止まってもすぐ再び起きる/24時間内に繰り返す
- 意識が戻らない、呼吸がおかしい、顔色・唇が紫(チアノーゼ)
- 体の左右で動きが違う/片側だけのけいれん
- けいれん後に手足の麻痺やぐったりが続く
- 生後6ヶ月未満、または髄膜炎を疑う症状(ひどい嘔吐・大泉門の膨隆)
単純型と複雑型|「片側」って何?
熱性けいれんには2タイプあり、対応や検査の必要性が変わります。
| 単純型(多い・心配少ない) | 複雑型(要注意) | |
|---|---|---|
| 時間 | 15分未満 | 15分以上 |
| 左右 | 全身が左右対称 | 片側だけ・左右非対称(焦点性) |
| 回数 | 24時間以内に1回 | 24時間以内に複数回 |
「片側」とは、体の右半分だけ・左半分だけ、あるいは片方の手足や顔だけがけいれんする状態のこと(焦点性=しょうてんせい)。全身が対称に動く単純型と違い、複雑型のサインなので、この点を医師に伝えるのが大切です。だから動画が役立つわけです。
注意する薬|抗ヒスタミン薬に気をつけて
薬剤師として特に伝えたいのがこれです。眠くなりやすい「第1世代の抗ヒスタミン薬」とテオフィリン(気管支拡張薬)は、熱性けいれんの持続時間を長くしたり、起こりやすくする可能性が指摘されています。
| 注意したい薬 | 例 |
|---|---|
| 第1世代抗ヒスタミン薬(鎮静性) | ポララミン、ペリアクチン、ニポラジン、ザジテン(ケトチフェン)、アタラックス等。市販のかぜ薬・鼻炎薬にも含まれることが |
| テオフィリン製剤 | テオドール、テオロング等(ぜんそくの薬) |
💊 アレルギーは関係ある?
アレルギー体質そのものが熱性けいれんを起こすわけではありません。ただし、アレルギーや鼻水・かぜで処方される「眠くなるタイプの抗ヒスタミン薬」が、間接的にけいれんに影響することがあります。熱性けいれんの既往があるお子さんは、受診時に必ず「熱性けいれんを起こしたことがある」と伝えてください。眠くなりにくい第2世代の薬を選んでもらえます。抗ヒスタミン薬の選び方は「抗ヒスタミン薬の選び方」も参考に。
何度以上の熱で注意する?|低めの熱でも起きる
「高熱ほど危険」と思われがちですが、実は熱の高さと熱性けいれんの起こりやすさは単純に比例しません。むしろ発作時の体温が39度以下と低めだった子は、再発しやすいという報告があります(体温が低くても発作が誘発される=閾値が低い体質)。
また、解熱剤で熱を下げても熱性けいれんは予防できません(ガイドラインでも明記)。解熱剤は「つらさをやわらげる」ためのもので、けいれん予防が目的ではないと理解しておきましょう。解熱剤の使い方は「子どもの解熱剤の使い方」をどうぞ。
遺伝する?|家族歴があると再発しやすい
熱性けいれんには体質(遺伝的な要素)が関わります。両親やきょうだいに熱性けいれんの既往があると、再発リスクが2倍以上になるとされています。「パパも小さい頃けいれんした」というご家庭は、起こりやすい体質を受け継いでいる可能性があります。
ただし、これは「必ず起こる」という意味ではありません。大多数は成長とともに自然に卒業していきます。
脳波検査は必要?
単純型の熱性けいれんでは、脳波検査は基本的に不要です(血液検査・CT/MRIも通常不要)。元気に回復していれば、追加の検査なしで様子を見ます。
一方、複雑型(片側・15分以上・繰り返し)や、てんかんが心配される場合は脳波検査を検討します。検査するなら発作から7日以降が推奨されています(直後は正確に評価しにくいため)。
何歳まで続く?
熱性けいれんは生後6ヶ月〜5歳ごろに多く、多くは5〜6歳ごろまでに自然に卒業します。脳の発達とともに、熱に対する「けいれんの起きやすさ」が落ち着いていくためです。6歳を過ぎても発作がある場合は、他の原因がないか慎重に評価します。
繰り返す場合の対応|ダイアップ(予防)
熱性けいれんは約3人に1人が再発します。再発しやすいのは次のような子です。
🔁 再発しやすいリスク因子
- 初発が生後15ヶ月未満と早い
- 家族(親・きょうだい)に熱性けいれんの既往
- 発作時の体温が39度以下と低め
- 発熱から発作までの時間が短い
リスク因子がなければ再発率は約15%、因子が複数あると大きく上がります。
再発を繰り返す子や、15分以上の長い発作を起こした子には、発熱時にジアゼパム坐薬(ダイアップ)を予防的に使うことがあります。ただし、単純型が1〜2回起きただけなら、通常は予防薬は不要(ガイドラインでも常用は推奨されていません)。使うかどうかは主治医と相談しましょう。
💊 薬剤師からの重要ポイント|ダイアップと解熱剤の順番
ダイアップ(ジアゼパム坐薬)と解熱剤の坐薬を同時に入れると、ダイアップの吸収が妨げられます。両方使うときは、必ずダイアップを先に入れ、30分以上あけてから解熱剤の坐薬を使ってください。順番を守らないと予防効果が落ちてしまいます。
まとめ
| ポイント | まとめ |
|---|---|
| 起きたら | 時間を計る→横向き→安全確保→動画。口に物を入れない |
| 救急車 | 5分以上・初めて・繰り返す・片側・意識戻らないなら119番 |
| 複雑型のサイン | 15分以上・片側(焦点性)・24時間内に複数回 |
| 注意する薬 | 眠くなる抗ヒスタミン薬・テオフィリン。既往は必ず申告 |
| 解熱剤 | けいれん予防効果はなし |
| 遺伝・脳波 | 家族歴で再発2倍。単純型は脳波不要 |
| 何歳まで | 多くは5〜6歳ごろ卒業。約3人に1人が再発 |
熱性けいれんは見た目が衝撃的で、親はどうしても動転してしまいます。でも、「時間を計って、横向きにして、5分を目安にする」——この3つを覚えておくだけで、いざという時に落ち着いて対応できます。大多数は後遺症なく元気に育ちますので、正しい知識を持って備えておきましょう。
※この記事は一般的な情報です。お子さんの状態については必ず主治医の指示に従ってください。
参考文献
- 日本小児神経学会「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」
- AAP. Febrile Seizures: Clinical Practice Guideline for the Long-term Management. Pediatrics. 2008.
- AAP. Neurodiagnostic Evaluation of the Child With a Simple Febrile Seizure. Pediatrics. 2011.
- Recurrence risk after first febrile seizure and effect of short term diazepam prophylaxis. Arch Dis Child.


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