授乳中でも飲める薬は?|薬剤師ママが教える痛み止め・風邪薬の選び方と注意点

授乳中でも飲める薬を解説するイラスト 痛み止めや風邪薬の選び方 くすり・薬の知識

「授乳中だけど、頭が痛い…」「風邪をひいたけど、薬を飲んだら母乳は大丈夫?」——授乳期のママは、自分の体調が悪くても薬を飲んでいいのか分からず、つい我慢してしまいますよね。

私も授乳中、ひどい頭痛や風邪のたびに「飲んでもいいのかな…」と不安でした。薬剤師なのに、わが子のこととなると慎重になりすぎてしまうんです。

結論からお伝えすると、授乳中でも飲める薬はたくさんあります。多くの薬は母乳に移行する量がごくわずかで、自己判断で授乳をやめたり我慢したりする必要はないことがほとんどです。この記事では、薬剤師ママの視点で、授乳中の薬の選び方を根拠に基づいてまとめました。

💡 この記事でわかること

  • 授乳中でも比較的安全に使える薬(痛み止め・風邪・アレルギー)
  • 授乳中に避けたほうがよい成分(コデインに注意)
  • 総合感冒薬より「単一成分」がよい理由
  • 薬を飲むベストなタイミング
  • 困ったときに頼れる公的な情報源

✅ 先に結論|授乳中の薬選びの3原則

  • 痛み・熱は、まずアセトアミノフェン(第一選択)
  • 市販の風邪薬はコデイン・ジヒドロコデイン入りを避け、症状に合う単一成分を必要最小限だけ
  • 飲むなら授乳直後。迷ったら、国立成育医療研究センターのリストか薬剤師へ

大前提|ほとんどの薬は母乳への移行がごくわずか

まず知っておきたいのは、多くの薬は母乳に移行する量がとても少ないということ。お母さんが飲んだ薬のうち、母乳を通して赤ちゃんに届くのはごく一部で、影響がほとんどないものが大半です。

「薬を飲むなら授乳をやめなきゃ」と思い込んで断乳してしまうケースもありますが、多くの場合その必要はありません。むしろ、つらい症状を我慢するほうが、ママの回復を遅らせて育児に支障が出ることも。正しい知識で、上手に薬と付き合っていきましょう。

母乳に薬が移る量の目安|RID(相対的乳児投与量)とは?

薬が母乳に移る量は、薬ごとに違います。目安になる指標がRID(相対的乳児投与量)です。お母さんが飲んだ量(体重あたり)に対して、母乳を通して赤ちゃんが取り込む量が何%にあたるかを示す数字で、一般にRIDが10%未満なら、赤ちゃんへの影響は小さいとされています。

一般に、分子量が小さい・脂に溶けやすい・血液中のたんぱく質と結合しにくい・体内に長く残るといった性質の薬は、母乳に移りやすい傾向があります。逆に、これらの逆の性質の薬は移りにくいとされます。また、赤ちゃんの月齢も大切で、新生児や早産児は薬を処理する力が未熟なため、より慎重な判断が必要です。

ただし、RIDだけで安全かどうかが決まるわけではありません。「この薬は?」と迷ったときは、自分で判断せず、後ほど紹介する公的な情報や、医師・薬剤師を頼ってください。

授乳中でも比較的安全に使える薬

症状別に、授乳中でも比較的安心して使えるとされる代表的な成分をまとめました。

症状 比較的安全とされる成分(代表的な商品名)
頭痛・発熱・痛みアセトアミノフェン(カロナール、タイレノール)/イブプロフェン(ブルフェン)
咳デキストロメトルファン(非麻薬性の咳止め)
鼻水・アレルギー第2世代の抗ヒスタミン薬(ロラタジン、セチリジンなど)
細菌感染(処方)ペニシリン系・セフェム系・マクロライド系の多くの抗菌薬
便秘酸化マグネシウムなど

とくに痛み・発熱にはアセトアミノフェンが第一選択。子どもにも妊婦さんにも使われる、安全性の高い成分です。頭痛や乳腺炎の発熱などにも使えます。

痛み止めの違い|アセトアミノフェン・イブプロフェン・ロキソプロフェン

  • アセトアミノフェン(カロナール、タイレノールなど)…授乳中の痛み・発熱の第一選択。迷ったらまずこれ
  • イブプロフェン…母乳へのRIDが1%未満とごくわずかと報告されており、授乳中でも使いやすい成分です(産婦人科オンラインジャーナル)
  • ロキソプロフェン(ロキソニンなど)…活性代謝物が母乳に移行しにくいと考えられ、授乳中に使われることがあります。ただし第一選択はアセトアミノフェン。用量を守り、長く続けないことが大切です
  • アスピリン…高用量は避けます

鼻水・アレルギーの薬|眠気の少ない「第2世代」を

クロルフェニラミンなどの第1世代の抗ヒスタミン薬は、眠気が出やすい薬です。授乳中は、まれに赤ちゃんの眠気や哺乳力の低下、母乳量への影響が心配されます。市販の総合感冒薬や鼻炎薬に入っていることが多いので注意しましょう。授乳中は、眠気の出にくい第2世代(ロラタジンなど)が選ばれやすい成分です。

授乳中に注意・避けたい成分|「コデイン」に要注意

薬剤師として特に注意してほしいのが、咳止めに使われる「コデイン」「ジヒドロコデイン」という成分です。これらは母乳に移行して、赤ちゃんに傾眠(眠りすぎ)・呼吸がゆっくりになる・哺乳がうまくできないといった影響が出るおそれがあり、授乳中は避けるべきとされています。

やっかいなのが、これらの成分は市販の総合感冒薬や咳止めに広く入っていること。「ドラッグストアで適当に風邪薬を選ぶ」のがいちばん危ないパターンです。

  • コデイン・ジヒドロコデイン(咳止め)→ 避ける
  • アスピリン(高用量) → 避ける
  • プソイドエフェドリン(鼻づまり)→ 母乳の分泌を減らすことがある

市販薬を買うときは、必ずパッケージの成分を確認するか、薬剤師に「授乳中です」と伝えて選んでもらうのが安心です。

なぜコデインは授乳中に避けるの?

コデインやジヒドロコデインは、体内で一部がモルヒネに変わる薬です。母乳を通して赤ちゃんに移ると、強い眠気・哺乳困難・呼吸が弱くなるといった重い影響が報告されていて、使用中は授乳を避けるとされています。日本でも、コデイン類は12歳未満の子どもへの使用が制限されています(厚生労働省の資料)。成分の確認は添付文書情報でもできます。

市販の風邪薬・鼻炎薬で、ほかに確認したい成分

  • 第1世代の抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン、クレマスチンなど)…赤ちゃんの眠気に注意
  • プソイドエフェドリン…母乳の分泌を減らすことがある
  • メチルエフェドリン…母乳に移行する成分として注意が必要とされる
  • 麻黄(まおう)を含む漢方薬(葛根湯など)…含まれる成分から使い方に注意が必要なことがあるので、授乳中は薬剤師に確認を
  • カフェイン…総合感冒薬や頭痛薬に含まれることがあるので、とりすぎない

処方薬で、慎重な判断が必要になることがある薬の例

抗がん剤、放射性医薬品(放射性ヨウ素など)、麻薬系の鎮痛薬、一部の向精神薬や抗てんかん薬などは、授乳を続けてよいか慎重な判断が必要です。ただし、「授乳をやめる」以外にも、薬を変える・授乳のタイミングを調整するといった選択肢があることも多いので、自己判断で断乳せず、主治医や産婦人科、薬剤師に相談してください。

総合感冒薬より「単一成分」を選ぶのがコツ

市販の風邪薬には、解熱・咳止め・鼻水・カフェインなどたくさんの成分が一度に入った「総合感冒薬」が多くあります。便利そうに見えますが、授乳中は不要な成分まで赤ちゃんに渡してしまうことに。

おすすめは「症状に合った単一成分の薬を、必要最小限だけ」という選び方です。たとえば「熱と頭痛だけ」ならアセトアミノフェン単体、というように、症状をピンポイントで狙うほうが、母乳に移る成分を最小限に抑えられます。

薬を飲むベストなタイミングは「授乳直後」

同じ薬でも、飲むタイミングで赤ちゃんへの影響を減らせます。ポイントは「授乳した直後に薬を飲む」こと。

薬は飲んでからしばらくして血中濃度がピークになります。授乳直後に飲めば、次の授乳までの間にピークが過ぎるので、母乳に移る量が少ないタイミングで授乳できます。授乳間隔が長い夜間の前に飲むのも一つの方法です。

薬を飲んだあと、赤ちゃんの様子で気をつけたいサイン

授乳中に薬を飲んだあと、次のような様子があれば、念のため医師や薬剤師に相談しましょう。

  • いつもより眠りすぎる・起きにくい
  • 哺乳力が落ちた・飲みたがらない
  • ぐったりしている・呼吸が浅い、ゆっくり
  • 極端に機嫌が悪い・落ち着かない
  • 発疹や下痢など、いつもと違う症状

呼吸が苦しそう・ぐったりして反応が悪いときは、ためらわずに救急受診を。なお、薬が原因とは限らないので、「いつもと違う」と感じたら、薬の名前を伝えて相談するのが安心です。

困ったら頼れる公的な情報源

「この薬、授乳中でも本当に大丈夫?」と迷ったら、自己判断せず信頼できる情報源を頼りましょう。いちばんおすすめなのが、国立成育医療研究センターが公開している情報です。

  • 国立成育医療研究センター「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」のリスト(50音順・薬効順で検索できます)
  • 同センターの「妊娠と薬情報センター」への相談
  • かかりつけの医師・薬剤師に「授乳中です」と伝えて相談

こうした科学的な根拠に基づいた情報を確認すれば、ネットの不確かな口コミに振り回されずに済みます。

よくある疑問Q&A

Q. 薬を飲んだら授乳を休んで搾乳して捨てるべき?

多くの薬では、その必要はありません。安全とされる薬なら、飲みながらいつも通り授乳して大丈夫なことがほとんどです。ただし一部、授乳を一時中断する判断が必要な薬もあるので、心配なときは医師・薬剤師に確認を。

Q. 鎮痛剤を飲みたいけど、どれがいい?

まずはアセトアミノフェンが第一選択。イブプロフェンも母乳移行が少なく使いやすい成分です。市販の頭痛薬を選ぶときは、これらの単一成分のものを選ぶと安心です。

Q. アレルギーの薬で赤ちゃんが眠くなることはある?

第1世代の抗ヒスタミン薬(眠くなりやすいタイプ)は、まれに赤ちゃんの眠気や母乳分泌に影響することがあります。授乳中は眠気の少ない第2世代を選ぶとより安心です。

Q. ロキソニン(ロキソプロフェン)は授乳中に飲んでもいい?

母乳に移行しにくいと考えられ、授乳中に使われることがあります。ただし、第一選択はアセトアミノフェンです。ロキソニンを使う場合は、用量を守り、長く続けないようにしましょう。市販薬は、薬剤師に「授乳中です」と伝えて選んでもらうと安心です。

Q. 葛根湯などの漢方薬は?

葛根湯は麻黄を含みます。成分によっては授乳中に注意が必要なことがあるので、自己判断せず、薬剤師に「授乳中です」と伝えて相談してください。乳腺炎のときの薬の使い方は、乳腺炎の対処法でくわしく解説しています。

Q. 生まれたばかりの赤ちゃんでも同じ?

新生児や早産児は、薬を処理する力が未熟なため、より慎重な判断が必要です。この時期の授乳中の薬は、必ず産婦人科・小児科の医師や薬剤師に確認してください。

まとめ|我慢しすぎず、正しく選べば大丈夫

  • 多くの薬は母乳への移行がごくわずか、断乳は基本不要
  • 痛み・発熱はアセトアミノフェンが第一選択
  • コデイン入りの咳止めは避ける(市販の風邪薬に注意)
  • 総合感冒薬より単一成分を必要最小限で
  • 飲むなら授乳直後がベスト
  • 迷ったら国立成育医療研究センターや薬剤師に相談

授乳中だからと体調不良を我慢しすぎると、ママ自身がつらくなってしまいます。正しい知識で薬を上手に使って、無理せず育児を続けてくださいね。

※本記事は一般的な情報をまとめたものです。薬の安全性は最新の研究や個々の状況によって異なります。市販薬を選ぶ際は薬剤師・登録販売者に「授乳中」と伝えてご相談ください。処方薬については必ず医師の指示に従い、自己判断での中止や継続は避けてください。

参考文献・出典

※本記事は上記の公的機関・学会・研究等を参考に、薬剤師がわかりやすくまとめたものです。

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